「退職してから日が経つのに、退職金が支払われていない。」と不安になってはいませんか。
退職した後は、退職金の支払いが待ち遠しくなりますよね。
会社に長く勤めていた場合であれば、なおさら期待してしまうのではないでしょうか。
しかし実際に退職金が振り込まれる時期は、勤めていた会社や自身に適用される制度の影響を受け、変化してきます。
本記事では、現在の退職金制度の概要や、支払いが遅い場合の対処法・注意点などについて、分かりやすく解説していきます!
不安な気持ちになる前に、正しい知識を身に付けるようにしましょう!
退職金制度は法律によって定められていない
はじめに、退職金は必ず支払われるものだと思っている方が多いのではないでしょうか。
実は、退職金制度は法律によって定められているものではないのです。
そのため、従業員に支払われる給与とは違い、企業側に支払いの義務があるわけではありません。
それならば退職金の支払いが行われなかった場合に請求できないのではないか、と心配になってしまう方がいるかもしれませんが、そのような心配はいりません!
基本的に企業の就業規則には退職金の支払いに関しての規定があることがほとんどであり、そのような退職金規定がある場合には、企業側に支払いの義務があります。
退職金の支払いが遅いと感じている場合には、勤めていた会社の就業規則に記載されている規定をもう一度チェックしてみましょう。
ここで、「退職金の制度を撤廃されてしまったら、従業員にとって圧倒的に不利になってしまう。」と思う方もいると思います。
しかし、退職金制度を撤廃することは就業規則における不利益の変更にあたるため、現在の退職金制度が撤廃されることは考えにくいです。
簡単にまとめると、退職金制度が定められていない場合には企業側に退職金支払いの義務はありませんが、就業規則に定められている場合に支払わないのは違反である、ということです。
各種退職金の種類
退職金制度は大きく分けて2種類あります。
それぞれの特徴について知り、自身がどのタイプの退職金を受け取るのか理解しましょう!
企業の退職金
企業によっては、自社で積み立てをする独自の退職金制度を規定しているところもあります。
この制度は主に資金力がある大企業が取り入れています。
企業それぞれが独自に取り決めている退職金制度であるため、企業によってその制度の内容が異なっています。
例えば、厚生年金の支給が65歳からに引き上げられた際には、定年である60歳になってから支給開始の65歳になるまでのギャップ期間を埋めるために、新たな退職金制度を導入する企業もありました。
現在は少子高齢化社会であり、退職金制度に関しての見直しが行われている企業も多く、特殊な退職金制度を導入している企業も少なくないので、自身の勤めていた会社の制度をしっかり確認することが大切です。
上述したように大企業が多く行っている退職金制度ですが、中小企業の中にも充実した退職金制度を導入しているところがあるため、気になるようであれば確認してみましょう!
さまざまな退職金共済
独自の退職金制度のための資金力がない企業では、基本的に退職金共済に加入することになります。
退職金共済にもさまざまな種類があり、自身が所属する企業・業界等によっても加入する共済が変わってきます。
具体的には、国の制度であり中小企業が多く加入する中小企業退職金共済、商工会議所を通じた特定退職金共済が挙げられます。
さらに、「独立行政法人 福祉医療機構」が運営している、介護士・看護師など医療福祉業界従事者が多く加入する退職手当金共済というのもあります。
また他にも、業界ごとに別の業界に加入していたりもするため、非常に多くの種類があります。
退職金共済ごとに内容が違っているため、退職金の支払い日について一概にこうだと言うことはできません。
“労働基準法”よりも”就業規則”が優先される
労働基準法23条では、退職金は請求から7日以内に支払わなければならないと規定されています。
ですが、この法律がどのような状況でも適用されているならば、退職金の支払い時期について悩む必要はなくなってしまいますよね。
しかし実際には実際には企業の就業規則の方が優先されることになっています。
なぜかというと、もともと退職金の支払いというのが法律で義務付けられたものではなく、企業の就業規則によって定められているものであるからです。
よって、7日以内ではなく、退職金制度で定められる支払い期日までに支払われれば問題ない、ということになります。
退職金が支払われる日を確認したい場合には、就業規則における支払い期日に関する記載をチェックしてみましょう。
各種退職金の給付時期
次に、「退職金の支払いが遅い!」と感じている方に向けて、退職金がいつ支払われるのかを解説していきます。
企業独自の退職金
企業独自の退職金は一般的に、退職した翌々月までには支払われることが多くなっています。
基本的には、退職する際に退職金の支払い日についての説明を受けます。
ここで注意しなければならないのが、会社側の資金的な問題から、退職金の支払い時期の延長をお願いされることがあるということです。
しかし、退職金の支払い期日を企業側の都合で延長することは、原則として認められません。
さらに退職金の支払いについては、5年間という時効が存在するので、そのことについても頭に入れていた方が良いでしょう。
退職金共済の退職金
共済に加入している場合の退職金に関しては、平均すると6週間ほどで退職金が支払われます。
ただし、加入している共済から退職金が支払われるのは、運営している機構側が掛金の入金を確認した後になるので、2か月程度かかってしまう場合もあります。
以下が主な退職金共済の支給時期です。
退職金共済支給時期
- 中小企業退職金共済→退職後4週間ほど
- 特定退職金共済→退職後4週間ほど。
- 独立行政法人 福祉医療機構→請求してから2か月ほど
しかし3月末に退職する人が多く、その時期には請求が多くなってしまうため、上記の目安を超えてしまうことがあります。
退職金が支払われないときの対処法
退職金の支払いに関して、会社側にうやむやにされたり、期間が経っても支払われなかったりすることがあります。
上に書いたように、基本的には就業規則に支払い日の規定があり、退職の際に確認されるのが一般的です。
支払い期日を過ぎても退職金が支払われない場合には、まずは企業側に電話で確認してみましょう。
それでも解決しない場合には、労働基準監督署に相談することが非常に有効です。
労働基準監督署から企業に対して退職金の未払い申告をしてもらうことができます。
さらに、就業規則に支払期日に関する規定がない場合には、期限付きの請求をおこなうことができます。
労働基準法が定める「7日以内」という請求を行うことができるので、会社への請求の際にはぜひ利用しましょう!
退職金についての注意点
ここまで退職金制度について説明してきましたが、いくつか注意すべき点があるので、紹介します。
退職時期によっては支払いが遅くなる!
退職金が支払われるタイミングについては、退職した時期も関わってきます。
例えば、退職者が多い3月などには、退職に伴う事務作業が多くなるという理由から、支払いが遅くなってしまう傾向があります。
また企業側の立場としても、多額の退職金を一気に支払うのが難しい、という事情があります。
支払日が明確にされていない場合には後回しにされてしまう場合があるので、そういった事情にも注意していることが大切です。
役所に問い合わせても支払い期日は分からない!
市役所や労働基準監督署に問い合わせても、退職金の支払い期日に関しては分かりません。
企業の就業規則による規定や、退職金共済ごとの規定が異なっているためです。
以前まで勤めていた会社に問い合わせるのが億劫だ、という方もいるかもしれませんが、会社の退職金担当者に連絡をして確認しないと分からないので、自身のためにもしっかりチェックするようにしましょう。
退職金を頼りにしすぎない!
退職金が振り込まれるはずだから安心だと思うことは非常に危険です。
上記のように、退職金支払いはその時の状況や時期によって変わるため、「思っていたよりも支払いが遅い」ということがしばしばあります。
すぐに支払われるから大丈夫だろうと思ってお金を使いすぎてしまうと、予定よりも支払いが遅いために、金銭的に困った状況に陥ってしまう恐れがあります。
よくあるのが、車の購入、家のリフォームなどを退職のタイミングでおこなってしまうことです。
このような大きな契約はリスクが伴うので、実際にお金が手元に入るまで安易に大金を使わないのが賢明だといえますね。

「退職金の支払いが遅い!」と思ったら・・
これまで説明してきたとおり、退職金の支払い時期は会社の就業規則や、加入している退職金共済の規定によっても異なっています。
また、退職した時期や、その時の会社の状況によっても大きく変わってくるのがポイントです。
このような退職金制度の実情を正しく理解し、支払いが遅いことに対しての不安や疑問をなくしましょう!